過眼日録抄[2000/6]

不要不急の読書日記也。

2000/6/1(木)

大杉重男;2000/4;小説家の起源 徳田秋聲論;

;講談社;¥2,500(1割引);B6判;縦組;上製;;△;

宮崎芳三;1992/2;太平洋戦争と英文学者;

;研究社出版;(借覧);B6判;縦組;上製;;△+;

高橋しん;2000/7;最終兵器彼女(1);

BIG SPIRITS COMICS;小学館;¥505;B6判;;並製;;△+;

普段ならよまぬだらうに、つい「気晴し」(ハイデガー)に買つてしまつた。その少女マンガからの豊かな収奪に驚きつつ(私は『いいひと。』はよんでゐない)も、そしてヒロイン「ちせ」のせつなさに涙しながら、しかし、「戦闘美少女」もの(斉藤環)の系譜の最末端に位置づけられるであらう本作に、私は頗る違和感をおぼえた。なぜだらうか。

鴨居まさね;1998/6・1999/12;SWEETデリバリー(2)(4);

ヤングユーコミックス;集英社;各¥505;B6判;;並製;;△;

会田誠;1999/4;孤独な惑星;

;DANぼ;¥2,500(1割引);A4判;;並製;○;

すげえおもしれえ、の一言あるのみ。

2000/6/2(金)

中原章雄;1999/2;「辞書のジョンソン」の成立 ―ボズウェル日記から伝記へ―;

;英宝社;(借覧);A5判;横組;上製;;△;

2000/6/3(土)

小林信彦;2000/1;現代〈死語〉ノートII;

岩波新書(新赤版)651;岩波書店;¥700(借覧);新書判;縦組;並製;;△;

榎戸洋司 企画・原作/GAINAX;2000/6;フリクリ(1);

角川スニーカー文庫(角川文庫11514);角川書店;¥381(1割引);文庫判;縦組;並製;;△;

小説としておもしろいのか(自立してゐるか)は別にして、なぜナオ太がタックンかとか、なぜカモンが編集長かとか、1話の敵ロボット(?)は腕の部分だけだつたこととか、アニメだけでは分らなかつた(すくなくとも私には)ことが知られておもしろかつた。また、アニメのはうを見たくなりました。あと、「解説」(佐藤裕紀)にキューコミなお嬢さんまでGET(p.154)とあつて、私がはじめて『アニメージュ』誌でハル子の絵を見たときに、“なにをいまさら岡崎京子”、と感じたのはそこまで的外れでもなかつたかなあ、と思ひました。

尾藤正英;2000/5;日本文化の歴史;

岩波新書(新赤版)668;岩波書店;¥700(1割引);新書判;縦組;並製;;△+;

2000/6/4(日)

大島一彦;1999/8;寄道 試論と随想;

;旺史社;¥3,300(借覧);B6判;縦組;上製;△;

まへによんだ中公新書の『ジェーン・オースティン』がおもしろかつたやうに覚えてゐたので、借りてみた。小沼丹のお弟子さんだつたのか。

小野塚カホリ;1999/5;花粉航海;

Wonderland COMICS;宝島社;¥790(¥450);A5判;;並製;;△;

麻生みこと;1996/4・1997/4・1997/10;天然素材でいこう。(1)〜(3);

花とゆめCOMICS;白泉社;各¥390(¥200);新書判;;並製;;△;

題名から勝手に、ダメな私だけどありのままでいいんだ、といふやうなお話かと誤解して、嫌がつてゐたのだけれど、さうではなかつた。しかしまあ、どつかでよんだことのあるやうな感じもするやうな話ではある。この作者のものでは、『メロディ』誌の「GO!ヒロミGO!」の単行本化を待つや切。

船堀斉晃ほか;1997/7;失楽園(6);

;ふゅーじょんぷろだくと;¥924(¥550);A5判;;並製;;△;

エヴァのエロ同人誌アンソロジー。時のたつのは早いなあ、と月なみなことを思ふ。

2000/6/5(月)

大平健;1999/9;こころの散歩道;

;岩波書店;(借覧);B6判;縦組;上製;;△+;

2000/6/6(火)

安田敏朗「「英語第二公用語論」におもう」(『創文』420号、2000/5、pp.11-15.)をよむ。「英語第二公用語論」に対する是非は別として、むかむかする。この人――その仕事を私はあまり評価してゐない――は、国家の禄を食んでゐて潔しとしない、といふところがあるべきぢやあないのだらうか。

2000/6/7(水)

傍島恵子;1999/12;かんたん図解 ホームページ[FrontPage Express編];

;技術評論社;¥1,480;B5変形判;横組;並製;;△;

2000/6/8(木)

澤野雅樹;1998/9;記憶と反復 歴史への問い;

;青土社;(借覧);B6判;縦組;上製;;;

よく分らない。そのくせ、未練がましくこの手の本を読んでしまふなあ。

田中メカ;2000/6;お迎えです。(2);

花とゆめCOMICS;白泉社;¥390;新書判;;並製;;○;

「ジャンル白泉社」(小野不由美)の衣鉢を継ぐ田中メカ、待望の第2巻。主人公、円ちやんもくづれてきていい感じ。このコミックスには初期作品も2篇はひつてゐて、どちらもよいけれど、「天然求心力α」のはうを推します。大枠は少女マンガなのに設定が妙(天然でマンガ的ドヂを連続する男)といふ「ジャンル白泉社」の粋のやうな佳品です。

2000/6/9(金)

谷沢永一;1981/11→1986/4;人間通でなければ生きられない;

PHP文庫;PHP研究所;¥448(¥100);文庫判;縦組;並製;;△-;

藤井貞和;2000/5;国文学の誕生;

;三元社;¥2500(1割引);B6判;縦組;並製;;△+;

よく似たたちの子安宣邦の一連の仕事――『近代知のアルケオロジー』(岩波書店)から『方法としての江戸』(ぺりかん社)までの――は、つねに私を落胆させるのに、この本はなかなかおもしろかつた。どうしてだらうか。そして、三元社の本はどうして段落のはじめを5字下げ(タブ?)にするのだらうか。

2000/6/10(土)

麻生みこと;1998/7・1999/1・1999/12;天然素材でいこう。(4)-(6);

花とゆめCOMICS;白泉社;各¥390(¥200);新書判;;並製;;△+;

加速度的に別のはなしになつてゆく感じ。それにしても、どうして少女マンガはかうも人生について考へてゐるのだらうか。

麻生みこと;2000/3;BELL(1);

花とゆめCOMICS;白泉社;各¥390(¥250);新書判;;並製;;△;

富沢ひとし;1999/3・1999/7・1999/12;エイリアン9(1)-(3);

ヤングチャンピオンコミックス;秋田書店;各¥514(1巻のみ¥300);B5判;;並製;;△++;

TINAMIX』誌vol.1.40でとりあげてゐて気にはなつてゐたのだけれど、『週刊文春』誌の「漫画羅針盤」で藤本由香里がすすめてゐたので買つてみる気になりました。で、よんでみて、なんか頭がくらくらするようです。

2000/6/11(日)

山本弘(と学会会長);2000/6;トンデモ大予言の後始末;

;洋泉社;¥1,500;B6判;縦2段組;並製;;△;

やつぱりはじめのころのはうが、濃かつたよなあ、と。あと、岩波からでた「予言集」はまとも(学術的)と知つて一安心(プティ・インテリ根性)。

中野翠;1995/12→2000/6;偽隠居どっきり日記;

文春文庫;文藝春秋;¥543;文庫判;縦組;並製;;△+;

サリンや大地震からもう5年。早いなあ。

2000/6/12(月)

榎本ナリコ;2000/6;榎本ナリコ画集 センチメントの季節;

Big Spirits Comics Special;小学館;¥3,000(1割引);A4判;;上製;;△;

何で買つちやつたかなあ。

大竹伸朗;1999/7;既にそこにあるもの;

;新潮社;(借覧);B6判;縦組;上製;;△;

2000/6/13(火)

[CD]

Coccoの新譜『ラプンツェル』を購入。

野口武彦;1999/10;江戸のヨブ――われらが同時代・幕末;

;中央公論新社;¥1,900(借覧);B6判;縦組;上製;;△+;

高橋源一郎が、「退屈な読書」(『週刊朝日』誌)ですすめてゐたので読んでみる。意外におもしろかつた。特に「富士女人開帳の事」の汪溢するエネルギー。死んでも命のあるやうにp.47.)といふギャグは昔からあつたんだなあ。私はきかないから分らないけど、落語とかにもでてくるのかもしれない。あと、諸色高直しよしきたかねとルビがふつてある(p.187.)のは、「しよしきかうぢき」のまちがひだらう。

岩瀬達哉;1999/9;われ万死に値す ドキュメント竹下登;

;新潮社;¥1,400(借覧);B6判;縦組;上製;;△+;

中条省平が、「仮性文藝時評」(『論座』誌)ですすめてゐたので読んでみる。意外におもしろかつた。皇民党“ほめ殺し”事件のうらには佐川がゐたのか、岩國哲人も竹下人脈のうちなんだなあ、そして、やつぱり「日本には政界はあつても政治はない」(丸山眞男)のかなあ、と歎息。

永瀬唯編;1997/7;ターミナル・エヴァ 新世紀アニメの世紀末;

;水声社;¥1,200(¥100);A5判;;並製;;△;

いまよんでも生きてゐるのは、大月隆寛「「研究」と言う名の神」くらゐか。世間とどうやつて折合ひをつけて生きてゆくのか。

2000/6/14(水)

浅田彰・田中康夫;1999/8;憂国呆談;

;幻冬社;¥1,800(借覧);B6判;;;;△-;

小林敏明;1991/11;精神病理からみる現代思想;

講談社現代新書;講談社;¥650(¥250);新書判;縦組;並製;;;

2000/6/15(木)

小池田マヤ;2000/6;…すぎなレボリューション(3);

ワイドKC-444 Kiss;講談社;¥571;A5判;;並製;;△+;

このシリーズをよみはじめたのも、藤本由香里「漫画羅針盤」(『週刊文春』誌)で紹介せられてゐたからだつた。ぐんぐんおもしろくなるなあ。今回、表紙裏の4コマに“おち”がなかつたので、どうしたかなあ、と思つたらそれは、この巻から本編にはひるから、といふことみたい。しかし、「甘いロマンス」もいいけれど、この世のなかに蔓延する“恋愛教”の迷妄はだれがデプログラムしてくれるのかなあ。

河添房江・小林正明・神田龍身・深沢徹・小嶋菜温子・吉井美弥子編;1999/5;〈平安文学〉というイデオロギー;

叢書 想像する平安文学 第1巻;勉誠出版;(借覧);A5判;;上製;;△;

ある種の(偶像破壊的な)おもしろさは、ある。しかし、これだけぢや文学研究はダメになる、と思ふ。それに、かういふことをする人は、結局左翼(超遅れてきたニュー・アカ)だからなあ。本巻にも執筆している深沢徹の大江匡房論『中世神話の練丹術』(人文書院)の序章をよんだときには、柄谷行人までひつぱりだしてなにをいふかとおもへば、“巫覡は〈民衆〉とつながる回路だからよい。”だもんなあ。唖然としちまひましたよ。

2000/6/16(金)

河盛好蔵;1972/8→1994/10;河岸の古本屋;

講談社文芸文庫;講談社;¥1,100(¥250);文庫判;縦組;並製;;△;

『群像』誌7月号の「侃侃諤諤」で、「河盛」と一緒にあげられてゐた銘酒「田中」つてだれのことなんでせうか。御存じよりのかたは、お教へくださるとうれしいです。

大島弓子;2000/6;サバの夏が来た;

白泉社文庫;白泉社;¥543;文庫判;;並製;;△;

藪内清;1970/8;中国の科学文明;

岩波新書(青版)759;岩波書店;¥150(¥100);新書判;縦組;並製;;△;

先日訃報をきいた藪内氏の追悼のために。しかし、さすがに30年もたつと内容が(コンパクトによくまとまつてはゐるものの)清新なものではなくなつてゐるもんである。逆にいへば、氏のいうたことが世界史の常識になつてゐるわけで、それはすごいことである。あと、(これはありがちな相対主義だけれど)「科学文明」といふ枠組みでとらへてゐるところに、本書の限界があるだらう。それでは、近代になつて西洋が優位になるのは当り前なのだ。もう1つ。これは、直接の感想ではないけれど、日本を支那の周辺文明としてかんがへることが重要だらうと私は思つてゐる。

2000/6/17(土)

松原正;1999/10;夏目漱石 中巻;

;地球社;¥3,400(借覧);B6判;縦組;上製;;△+;

正字正かなでしるされた頗る男まへの「士君子」漱石論。

村瀬ひとみ;2000/6;フェミニズム・サブカルチャー批評宣言;

;春秋社;¥1,600(1割引);B6判;;並製;;△;

第4章「「女神」になんてなれないまま私は生きる」を初出(『ぼくの命を救ってくれなかったエヴァへ』三一書房)でよんだときに、あまり甘心しなかつたやうに記憶してゐたので、さう期待をせずによんだのだけれど、なかなかおもしろかつた。ただし、「第二部 フェミニズム評論編」のはうには疑問符をつけておきたい。あと、「第一部 サブカルチャー評論編」のはうがおもしろいといふのも、もしかしたら時代の稜線をはしる作品を認證してゆくことで、かへつて大多数のダメな「おたくのセクシュアリティ」(斎藤環『戦闘美少女の精神分析』太田出版。ただし斎藤は、この重要な問題を提起してはゐるが、その説明はうまくいつてないと思ふ。)までを免罪しちやつてるんぢやないかしら、といふ危惧をおぼえました。

2000/6/18(日)

『メロディ』誌(白泉社)7月号:

先月号で桑田乃梨子「男の華園」と麻生みこと「GO!ヒロミGO!」とが終つてしまつたので(前者は大団円、後者はそのうちまた続きがのるだらう)、すこしつまらない。川原泉「ブレーメンII」と岡野玲子「陰陽師」とは別格として、近頃おもしろくよんでゐるのは、加藤四季「お嬢様と私」と雁須磨子「どいつもこいつも」とである。にしても、(「陰陽師」の連載開始から買つてゐるけれど)なんだかまとまりのない雑誌だなあといふ印象はいまだにきえぬ。あと、倉田江美「UPS&DOWNS」は、今月号のはなしは、大平健『顔をなくした女』(岩波書店)のパクリではないか。

梶山季之;1974/7→2000/6;せどり男爵数奇譚;

ちくま文庫;筑摩書房;¥780(1割引);文庫判;縦組;並製;;△;

てつきり解説は坪内祐三だと思うてゐたら、永江朗でした。(しかし、いつにもましてどうでもいいことばかり書いてるなあ、けふは。)

2000/6/19(月)

吉田秋生『BANANA FISH』(別コミフラワーコミックス)全19巻を再読。この長篇のおもしろさについては、私がいまさら云々することもないだらう。ただ、はじめの数巻でアッシュのあごがどんどん細くなり、「美形」になつてゆくのが少し気にかかりました。

2000/6/20(火)

直木孝次郎;1999/7;わたしの歴史遍歴―人と書物―;

;吉川弘文館;(借覧);B6判;縦組;上製;261頁;△;

2000/6/21(水)

魔夜峰央;2000/6;パタリロ!(70);

花とゆめCOMICS;白泉社;¥390(1割引);新書判;;並製;190頁;△;

鴨居まさね;2000/6;雲の上のキスケさん(2);

ヤングユーコミックス;集英社;¥505;B6判;;並製;197頁;○;

かういふ良質な非ポルノ系レディ・コミをよんでゐると、いかに女の人が「まともな男」をもとめてゐるかが分るやうで、身につまされる。

2000/6/22(木)

小池清治;1994/10;日本語はどんな言語か;

ちくま新書009;筑摩書房;¥680(¥330);新書判;縦組;並製;222頁;;

日本語文法の解説書。わたくしは、頭が悪うて分らない。

2000/6/23(金)

白川静;2000/2;漢字III;

白川静著作集3;平凡社;(借覧);A5判;縦組;上製;600頁;△+;

本巻には[文字逍遙][文字遊心]の二著ををさめる。著者の研究にあつてはむしろ餘滴に属するものであらうけれど、読んでゐるあひだ常にその偉容に圧倒されるやうに感じた。小学(文字学)に志すもの必読の一書だらう。ところで、『新字源』くらゐの規模で、反切もきちんとのせてゐるやうな使ひ勝手のよい漢和辞典つて何かないんスかねえ。

桐谷滋編;1999/3;ことばの獲得;

小嶋祥三・鹿取廣人監修 ことばと心の発達 第2巻;ミネルヴァ書房;(借覧);A5判;横組;上製;263頁;△;

藤田和日郎;2000/7;からくりサーカス(13);

少年サンデーコミックス;小学館;¥390(借覧);新書判;;並製;188頁;△;

谷岡一郎;2000/6;「社会調査」のウソ――リサーチ・リテラシーのすすめ;

文春新書110;文藝春秋;¥690(1割引);新書判;縦組;並製;222頁;△+;

いやはや、おもしろい。しかしリサーチ・リテラシーが身についたやうには思へない(これは読者の問題)。あと、論文の格づけ機関をつくれ、といふ主張には違和感をおぼえるなあ。社会(科)学だけで科学のモデルがかんがへられてるやうな感じもするし。

2000/6/24(土)

藤島康介;2000/6;ああっ女神さまっ(21);

アフタヌーンKC-1114;講談社;¥438;B6判;;並製;166頁;△;

一時期、表紙の女神の正面顔がすごく変だつたけれど、あれはどうしたんスかね。

富沢ひとし;2000/6;ミルク クローゼット(1);

アフタヌーンKC-245;講談社;¥505;B6判;;並製;202頁;△;

『エイリアン9』よりは、はひりやすい(分りやすい)感じ。でも所詮おなじうたをうたつてゐるみたいでもある。ジャケットをはづした裏表紙の葉菜ちやん寿司がいい感じ。

間宮陽介;1999/3;丸山眞男 日本近代における公と私;

戦後思想の挑戦;筑摩書房;¥2,100(1割引);B6判;縦組;上製;261頁;△;

男惚れの丸山眞男論。『自己内対話』(みすず書房)は私もよんでゐた筈なのに、ここに引用されてゐるのをみると全然おぼえてなくて、しかもどれもいいので厭になる。『同時代論』(岩波書店)を借りてよんだら、どうしてもこちらもよみたくなつて到頭かつてしまつた。間宮陽介も西部邁門下だつたのに、佐伯啓思や松原隆一郎とは随分ちがふ道をすすんでるなあ。巻末の年譜を見ていたら、丸山眞男がミシェル・フーコーとあつてゐてビツクリ、1978年だから私がまだ2歳のときだ。それにしても、この「戦後思想の挑戦」シリーズは、これと同時にでた小浜逸郎『吉本隆明』と以外は出んかつたんかなあ[*]。無責任な。あとこの本、子安宣邦『事件としての徂徠学』(青土社)にまるでふれられてゐないのがチト気がかり(といふか残念)。

[*]2001年11月に、高澤秀次「江藤淳」が出た。

斎藤貴男;1997/6;カルト資本主義;

;文藝春秋;¥1,714(借覧);B6判;縦組;上製;396頁;△++;

文庫化を期に親本をよむ。おもしろい。日垣隆『敢闘言』(太田出版)は(自分でも「ちょっと迂闊」だつたと付言してゐるけれど)、EMをもちあげてゐるのはちよつとミソをつけた感じだなあ(でもこれも非常におもしろい本です)。

2000/6/26(月)

立読みの感想など。矢沢あい「NANA―ナナ―」絶好調、○。谷川史子「魔法を信じるかい?」まだこなれてない感じ、△-(以上『クッキー』集英社)。津田雅美「彼氏彼女の事情」竹林の有馬と宮沢がいい感じ、ちやんとつつこみがはひるのもまたよし、△。藤川佳世「かたつむり前線」はじめてよんだとき、津田雅美と似てんなあ(「天才の孤独」とかさあ)、同じ雑誌なのにいいのかしら、と思つたものである。津田は、しひたげられた者をかくのが、ものすごくうまいけれど、人間の観察は藤川のはうが深いんぢやないか、とおもふ昨今である、△。田中メカ「お迎えです。」アット・ホーム強化月間(!)、あひかはらず面白いなあ。(でも、こんないい話をつくつてゐては心がすさまないだらうか。)△+(以上『ララ』白泉社)。ついでに、麻生みこと「天然素材でいこう。」もよんだ。普通のお話、△(『ララDX』白泉社)。あと、枡野浩一『漫画嫌い』(二見書房)も見る、△。『一緒に遭難したいひと(1)』(主婦と生活社)が一番好きな男といふのは、これが西村しのぶ作品で唯一ヒロインのあひてが美男でないから感情移入しやすいからさうなのだ、といふのは当つてるだらうか。さうならヤだなあ。

上野俊哉;1996/10;人工自然論 サイボーグ政治学に向けて;

;勁草書房;(借覧);B6判;縦組;上製;414頁;△;

2000/6/27(火)

浅羽道明;2000/6;大学講義 野望としての教養;

;時事通信社;¥2,200;A5判;;並製;525頁;△+;

サーヴィス精神にみちた一冊。しかし、「半端者としての「知識人」」(本田和子、本書第六講)といふやうないひかたは、かへつてインテリの屈折した自尊心を表明してゐるだけではないか(そんなに「世間」からはづれた生き方などできてゐやうか)、といふやうなことを思ひながらよみすすめてゆくと、「第十五講 大学のハルマゲドン」にいたつて、文系大学院生のゆくへのなさがビシビシと指摘されて、脊筋が寒くなりました。

2000/6/29(木)

新潮文庫の新刊、阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』をかふ。単行本をみたときおもはずジャケ買ひするところだつた常盤響のキャッチーな装幀はどうなるのだらう、と心配してゐたのだけれど、文庫でも再現されてゐたので購入。このの写真は、常盤響写真集『Sloppy Girls』(新潮社)でも一番だと思ふ。「同伴批評家」(宮本顕治?)東浩紀の熱誠あふるる解説(やつぱり『IP』というてる――渡部直己『現代文学の読み方・書かれ方』(河出書房新社)pp.300-301.参照のこと――)もついてゐてお買得な一冊。腰巻の写真のTシャツにうきでた乳首を堪能せよ。

木田元;1993/2;ハイデガーの思想;

岩波新書(新赤版)268;岩波書店;(借覧);新書判;縦組;並製;240頁;△+;

読みやすかつたッス。

2000/6/30(金)

兵藤裕己;2000/1;平家物語の歴史と芸能;

;吉川弘文館;¥8,000;A5判;縦組;上製;318頁;△;

一番おもしろく感じたのは、第一部第三章「八坂流の発生」。口承を文字テクスト化することについては、わたしも考へてみたいものだ。お能が正本化されたことで演じるのにかかる時間がながく(今では、当初の2倍ちかくに)なつたことなんて、はじめて知つた。さういへば、『太平記〈よみ〉の可能性』(講談社選書メチエ)でも、『大日本史』が南朝正統論なのは、徳川家の先祖である(としてゐる)新田義貞が南朝方だつたから、なんていふのが意外を突かれておもしろかつたなあ。もつとも当然、意外ならよいわけではなくて、逆に、同第四章「歴史としての源氏物語」は、隠されたイデオロギー告発の論がかちすぎて実證がおそろかになつてる感じ。