;新典社;(借覧);A5判;縦組;上製;398頁;;ISBN978-4-7879-2719-4;
青表紙本は別本の一種だつて阿部秋生はそんなこといつたのか、そして本文研究はなんか最近そんな風潮だけどほんとにそれでいいの、といふ横井論文のつぎに、そんな風に本文系統を2分類したうへに河内本群を甲類、別本群を乙類とよぶことを提唱する伊藤論文がならんでゐると、わたくしのやうな門外漢は混乱するよ。にしても、伊藤論文の〈平安時代の物語本文の復元〉という夢を追う時代は終わった。〈二種類の本文系統を読む受容形態〉が、おぼろげながらも見えて来たのではないか、と思っている
(p.83)といふのはかつこいいなあ(でも、もはやかりそめに祭り上げられた聖典にすがりついた無邪気な本文読解の時代は過ぎ去ったのである。ただ一つの紫式部原本または藤原定家校訂本に辿り着く幻想を捨てて、目の前の諸伝本を他ならぬ本文自体によって一回的かつ歴史的な存在として正確に測定しなければならない
(pp.144-145、中村論文)といふのは、なんかちよつとな)。
あと、浜口論文の東久邇家旧蔵本だと意味が通じるからこれはいい本だ、といふのはなんか無邪気すぎな気がするのだけれど。普通さういふのは、あとからの意改をかんがへるものなんぢやないかな、と思ふけど、本文研究にあかるくないのでよくわからない。
ところで、『源氏物語』における本文の中でも、和歌に関しては比較的本文に異同がすくないとされている
(p.49)といふのは、まへにもどこかでみたことがあつて、小松英雄がどこかで和歌以外は鎌倉時代語みたいなことをかいてゐたやうな気もするのだけれど、すこしまへに山路の露だつたかの本文研究で、むしろ和歌のはうがどんどんかはるやうなことををしへられて、そんなものなのか、と思つたのもついでにメモつとく。
以下一往、目次をうつしておく。
- 源氏物語の本文と表現 : 「『大成』以後」と「阿部以後」の模索へ向けて / 横井孝(よこい・たかし) 9
- 一 『大成』以後と阿部秋生
- 二 『大成』根幹部分への疑義
- 三 阿部「別本の本文」の本文
- 四 源氏物語の本文と表現
- 五 夢の浮橋の巻の本文と表現
- 源氏物語本文の伝流と受容に関する試論 : 「須磨」における〈甲類〉と〈乙類〉の本文異同 / 伊藤鉃也(いとー・てつや) 43
- はじめに
- 一 本文内容を三分類することへの疑問
- 二 和歌の前後にみられる異同
- 三 説明的な傍記の混入と挿入
- 四 傍記が本行の前後に混入
- 五 傍記混入 : 〈乙類〉が前に、〈甲類〉が後に
- 六 語句の上下入れ替え
- まとめ
- 尾州家河内本源氏物語の書誌学的考察 : 鎌倉期本文の成立 / 岡嶌偉久子(おかじま・いくこ) 85
- はじめに
- 一 各巻別書誌一覧 : 書写的事項
- 二 本文書写について : 筆跡・行字数・和歌表記
- 三 本文に施された声点・句読朱点・振漢字について
- 三‐一 声点
- 三‐二 句読朱点 : 基幹巻における句点の移記
- 句読朱点の状況
- 句読朱点と本文修正・改訂との先後関係
- 三‐三 振漢字 : 二種の振漢字の存在
- 振漢字の状況
- 鎌倉期振漢字と本文修正・改訂との先後関係
- 四 本文修正・改訂―削訂・補入・見せ消ち―の状況
- 朱墨校合について
- 削訂について
- 五 「正嘉二年」奥書について
- 六 尾州家本源氏物語の成立
- 尾州家河内木帚木の書写様態をめぐって / 大内英範(おーうち・ひでのり) 129
- はじめに
- 本文訂正の例
- 訂正されていないが注意すべき箇所
- まとめ
- 陽明文庫本源氏物語の形容詞 / 中村一夫(なかむら・かずお) 143
- 一 問題の所在
- 二 諸本の使用状況
- 三 諸伝本の相対的関係
- 四 独自に持つ形容詞
- 五 まとめ
- 桐壷巻・諸本対照語彙表【形容詞編】
- 校異から見た官職 : 『源氏物語』賢木巻の太政大臣と左大将 / 秋澤亙(あきざわ・わたる) 167
- 一 祖父大臣と太政大臣
- 二 朱雀朝初期の関白
- 三 光源氏の「大将」
- 青表紙本『源氏物語』における二条右大臣と朱雀朝 : 河内本本文との「大殿」呼称の異同から / 牧野裕子(まきの・ゆーこ) 191
- 一 問題の所在
- 二 「大殿」の研究史 : 語学と文学研究の現在
- 三 「おとゝ」と「おほ(い)との」
- (1) 異同からの識別
- (2) 左大臣の人物呼称
- 四 青表紙本『源氏物語』における朱雀朝
- 星と浮舟 / 加藤昌嘉(かとー・まさよし) 215
- 1 鏡と浮舟
- 2 「彦星の光」のライン
- 3 『小夜衣』『更級日記』『浜松中納言物語』ヘ
- 新出の善本 : 東久邇宮家旧蔵本『源氏物語』末摘花の本文について / 浜口俊裕(はまぐち・としひろ) 231
- 一 はじめに
- 二 末摘花の書誌外観
- 三 成立と受納について
- 四 本文は青表紙本系統
- 五 青表紙本系統の明徴な事例
- 六 青表紙本の平中墨塗譚
- 七 東久邇宮家旧蔵本の位置
- 1 本文異同対校表
- 2 三条西家旧蔵本に近い本文
- 3 独自異文について
- (1) おおむね小差の異文
- (2) 「中将の君」
- (3) 「うちわひて」
- (4) 「しひら」
- (5) 「いとおかし」
- 八 まとめ
- 源氏物語帚木巻の「なでしこ」について : 漢詩表現との関わりを中心に / 新間一美(しんま・かずよし) 259
- 一、常夏の女と「なでしこ」
- 二、白居易「陵園妾」と「なでしこ」
- 三、「瞿麦花」詩と「なでしこ」
- 四、万葉集の「なでしこ」と道真の「瞿麦花」
- 光源氏の出家にかかわる表現 : 「御法」巻「一たび家を出でたまひなば~」をめぐって / 小島雪子(こじま・ゆきこ) 287
- はじめに
- 一
- 二
- 三
- 四
- おわりに
- 表現に内在する視点の性差 : 『源氏物語』のことば / 塚原明弘(つかはら・あきひろ) 311
- 一、はじめに : 考察の視座
- 二、女性的知性の宿る可能性 : 享受史と文体史
- 三、「つやつや」と「おの」「おのれ」
- 四、政治のことば
- 五、柏木の「むすぼほれ絶えぬ思ひ」
- 六、むすび
- 「玉鬘十帖」の心内語と会話文 / 平林優子(ひらばやし・ゆーこ) 331
- はじめに
- 一 筑紫から肥前、そして都へ
- 二 六条院入り
- 三 結婚と尚侍就任
- むすびに
- 国宝『源氏物語絵巻』「竹河」絵詞の表現世界について / 渋谷栄一(しぶや・えーいち) 351
- はじめに : 目的と方法
- 一 国宝『源氏物語絵巻』「竹河」の場面選択と本文抄出
- 二 国宝『源氏物語絵巻』「竹河」の「源氏物語」抄出書写
- (1) 「竹河」第一段(三紙31行)の「源氏物語」抄出書写
- (2) 「竹河」第二段(八紙109行)の「源氏物語」抄出書写
- 三 国宝『源氏物語絵巻』「竹河」の和歌と歌ことば
- (1) 「竹河」第一段の和歌
- (2) 「竹河」第二段の歌ことば
- (3) 「竹河」第二段の抄出書写と和歌
- 四 国宝『源氏物語絵巻』「竹河」の登場人物と人物呼称
- (1) 「蔵人少将」と「中将の君」
- (2) 女房「宰相の君」と「中将の君」
- おわりに
- 翻刻 天理図書館蔵「絵合巻」 / 久下裕利(くげ・ひろとし) 369
- 源氏物語 本文と表現の展望 : あとがきにかえて / 横井孝 381
- 一 本文の問題
- 二 表現の問題 #落合博志「古典語彙小考二題 : 「いのり」・「わかかみ」」(法政大学教養部紀要(人文科学編)96、1996)
- あとがき : 「身にしむ風」再考 / 久下裕利 393
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