角川全書・世界言語学名著選集 第III期 東アジア言語編(2) 第1巻;ゆまに書房;(借覧);A5判;縦組;上製;2+321+2+2頁;;ISBN4-89714-885-5;
山田孝雄は篠山だ - くうざん本を見るをみて、かりてきたもの。pp.86-88につぎのやうにあつた。
(……)關根正直氏の普通國語學にも主格を示す助詞として「の」「が」「は」の三をあげてあつたと覺えてゐる。今に至つては時効にかゝつてゐると云つてもよいから、ここに明かにいふが、著者が日本文法論を命がけで著述するに至つた最初の動機をつくつたのはこり關根正直氏の著書であつた。ここに少しく脱線氣味であるけれどもこの學問の爲にわざと一言しておかう。
著者は丹波國篠山の鳳鳴義塾に國語の教師をしてゐた。當時學校できめられてゐた文法の教科書が上の普通國語學であつた。著者はその主格の助詞の條をそのまゝ受賣的に講義してゐた。ところが一人の生徒があつて質問しつゝ自分らの用ゐてゐる「は」といふ助詞は主格の外のものをも示してゐると云つていろ〳〵實例をあげて質問し、本書の説はわからぬと言ふのであつた。自分の講義は教科書の朗讀の程度のもので、之に即答は出來なかつた。それで答は次の週まで待つてくれと云ひ、さて考ふれば考ふるほど、生徒のいふことが正しくて教科書が正しくないことが明かになつたので、次の授業には生徒にあやまつたのである。而して當時の大學者の國語學といふものが中學二年生よりも劣つてゐるといふことを考へて見たときに、我が國語の學問の貧弱さに悲しくもあり腹立たしくもあつたが、しかしながら、世に大學者も少からぬことだから、正しい説も世に公にせらるゝであらうと、それから一ケ年ばかりの間、國語國文に關する學術上の論説を深く注意して殆ど洩すまいとして讀みあさつたけれど、一人もその正しい説を出すものが無く、いづれも同し樣なことを繰り返してゐるに過ぎなかつた。そこで自分は思つた。こんなことで時日が經過してしまへばわが國語の正しい研究は全く行はれず、しまひには西洋人に日本語を教へてもらふ樣なことになるかも知れぬ。今はまさしく國語の災難に遭うてゐる時である。之を救うて正しいことを明かに示さねばならぬ。それには火事は見つけた人間が先づ消さねばならぬと同じく、かやうなことを見せられた自分が先づ之に沒頭せねばならぬと決心してこゝに日本文法の研究に殆んど半生を捧げたのであるが、その動機は普通國語學といふ書に「は」を主格の助詞としてあつたことにあり、その「は」が主格を示すものか否か、係といふことは如何なるものかといふことに自分の研究の出發點があり、その係といふことが確認せられた所に自分の研究の到着點があつたのである。
山田孝雄の文法関係の著作をよんだのは、たぶんはじめて。目次をうつしておく。
- 凡例 #
復刻にあたり、著者山田孝雄博士の書き込みに基づき、初版の誤植を一部訂正した。また、著者による本文の書き換えに関しては、三男である山田俊雄氏による付記を巻末に記した。- はしがき 7
- 一 語と文 8
- 二 一つの語 14
- 三 單語の種類別け 23
- 四 用言の種類別け 30
- 五 用言の活用と複語尾 46
- 六 助詞の種類別け 66
- 七 「は」と係助詞 84
- 八 語の位格 102
- 九 語の運用の研究と句の研究 125
- 一〇 文の本質 133
- 一一 文の研究の基礎としての句 137
- 一二 句の性質上の種類別け 152
- 一三 喚體の句の種類別け 159
- 一四 述體の句の種類別け 173
- 一五 喚體の句と述體の句との交渉 182
- 一六 句の複雜なる構成 193
- 一七 語の排列の原理 217
- 一八 文の種類別け 232
- 一九 複雜なる文及び文法學の極限 246
- 二〇 未開展の句 257
- 二一 略體の文 264
- むすび 308
- 索引
- 付記
うーん、感想がまとまらなくて、ほかのかたの感想をみる気になれないな。ポピュラリティもたかめだけれど(笑い声もけっこうあがっていた)、性愛と生死とについてのデリケートなとりあつかひがなされてゐるやうにも思へた。そして、なにより大島弓子作品をよみかえしたい気分になりました。いろいろと引照されてゐるのに、こちらのいんでくすが貧弱なせゐで、ぴんとこないところがあるのが、くやしい(だいたい、30もすぎたら、いちにんまへの大人で、大島弓子選集とか、ぽんとそろへてるはずだつたのになー)。大後寿々花、かはいかつた。
;NTT出版;(借覧);四六判;縦組;上製;viii+256+10頁;;ISBN978-4-7571-4156-8;
;春秋社;2,500円(借覧);四六判;縦組;上製;vi+3+239+24頁;;ISBN978-4-393-93023-6;
本が好き!(10月号)。
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