新潮新書244;新潮社;680円(583円);新書判;縦組;並製;185頁;;ISBN978-4-10-610244-8;
みながら、疑問とかに思つたことを適当に。
アルタイ語系に属するのではないかとされている(p.13)といふのは古いんぢやないか、といふか、言語類型と言語系統とは別のはなしだらう。あと、
膠着語の文法体系を持った言語は、借用語率が非常に高い(p.14)といふのは出典がしりたいな(自分でしらべればよいのだけれど)。
このとき、帰化人たちによって、漢文を音読する際の読み方としてもたらされていたのが、中国の現在の上海周辺である「呉」という地方(江南ともいう)の発音であった(p.26)と呉音を説明してゐるのだけれど、まづ「帰化人」といふ語にひつかかりを覚えるし、呉音もこんな断定的に江南地方の音だといへるかは疑問。全体に本書は、なんでこんなに朝鮮半島を無視してるのかがわからない。
中国語は単音節の言語で、言語学的に分析すると、頭子音+介音+核母音+韻尾というかたちに分解される(p.39)。なんで声調をはづしたのかな。
つぁやげども(p.49)は濁音はこれでいいのかな。小竹と書いてササと読む類を、万葉仮名に含めるのもだうかなあ。
国文学者小島憲之博士によって指摘されているように(p.61)といふけど、国風暗黒は吉沢義則の語ではないのかなあ。
「キ・ヒ・ミ・ケ・ヘ・メ・コ・ソ・ト・ノ・ヨ・ロ・モ」、また「ア行のエ」と「ヤ行のエ」の十四の仮名について、それぞれに二種類(甲類・乙類)の異なった音が存在した(pp.93-94)といふのは、15あるぢやん、と思はれないかな(といふか、ここは橋本の研究紹介だからいいけど、ア、ヤ行は上代特殊仮名遣からははづしたはうがいいよね)。
編纂したのが帰化人だったからではないかと筆者は考えるのである(p.95)。
奈良時代に書かれた点本は見つかっていない(p.97)。角筆加点はあるともいふけど。といふか、個人的には筆者のあげる朱点よりも、白点のはうが古訓点のイメージ。
正倉院聖語蔵の『華厳経』巻第十九と斯道文庫の『華厳経』巻第十四(08005011)とがあるといふことで、すると、この年頭に唯一不明の巻14を発見といふニュースがあつたけど、京博にもあるのなら唯一ではないし、慶応のもまうとつくに築島先生が調査なさつてたんだなあ(してみると、展示のパブ記事だつたのかなあ)、と思つたのだけれど、どの資料も目にしたわけでないし、論文をよみちがへてるかもしれないし、たしかなことはわからない(西福寺といふお寺にも景雲経の華厳経があるみたいだけれど、これはまた別なのかな。よくわからん)。
『下官集』は定家が独自に作ったということが定説がなってきていたが、ごく最近、源親行の文書が付載されている本が発見され、それによると「建保五年仲秋十月」に『拾遺愚草』の「進献」すべき由、言いつけられたことが明らかになり、行阿の『仮名文字遣』の序の信憑性が浮かび上がってきたといふ記述が、日本語学研究事典の下官集の項にあるのに最近気づいたので、あまり脈絡なくここに引用しておく(遠藤和夫執筆。
〈もどきのもじのこと〉とでも読むべきものかと推せられ、とも書いてゐるのは、辞書で定説とちがふ自説を主張するな莫迦、と谷沢永一が月刊言語誌だつたかのアンケートで、日本古典文学大辞典の伊藤博、万葉集への批判をしてゐたのを思ひ出さなくもない)。
実は、平安時代後期にはすでに「お」と「を」は、助詞の「を」を除いて、京都では同音になってしまっている(p.136)といふのの、
助詞の「を」を除いて、といふただしがきの意味がわかんない(p.166にも)。オがヲに合流したんだから、除くもなにもないぢやないんぢやないのかなあ。
恩師亀井孝(p.185)といふやうなかたが、こんなethnocentricなものをかくんだなあ。
一往、目次を写しておく。
- 序章 〈ひらがな〉と〈カタカナ〉 9
- 優秀な語学的センス
- 先斗町も八重洲も
- 膠着語は文明と文明をつなぐ架け橋
- 今は「あいうえお」だが
- 子音と母音が整然と
- システムと情緒
- 第一章 国家とは言葉である 21
- 漢字伝来の年代は誤りだが
- 『論語』と『千字文』
- 呉音は最も古い漢字の読み方
- 聖徳太子の時代になると
- 『十七条憲法』から『大宝律令』へ
- 大伴家持は和歌も漢文も
- 顔氏一族の業績
- 第二章 淵源としてのサンスクリット語 38
- 表音記号と表意記号
- 鳩摩羅什はバイリンガル
- 第三章 万葉仮名の独創性 44
- 漢字の音を漢字で示すには
- 漢文風に読んでしまうと
- 「ささ」は「つぁつぁ」
- 「借訓」と「借音」
- 『万葉集』だけではなく
- 第四章 『万葉集』が読めなくなってしまった 56
- 漢詩は政治的教養
- 国風暗黒の時代の到来
- 遊びを越えた真剣勝負
- 恋の歌は女性のためだけではない
- 言葉の意味すら
- 第五章 空海が唐で学んできたこと 71
- 長安の文化を求めて
- 中国の役人も驚く語学レベル
- 模倣から「実」へ
- 反骨・最澄の正論
- 陀羅尼と言霊信仰
- 中国語から日本語による理解へ
- 大きな革命
- 菅原道真と遣唐使の廃止
- 第六章 〈いろは〉の誕生 93
- 三つの母音が消えてしまった
- 朱点(ヲコト点)の登場
- 西大寺と日本語の深い関係
- 色は匂へど
- 空海の作ではない
- 第七章 仮名はいかにして生まれたのか 104
- 実名は伏せて
- 漢字を簡略化する
- 漢字の一部を利用する
- 仮名の「仮」とは
- 姿だけは漢語
- 外来語を消化する過程で
- 第八章 明覚、加賀で五十音図を発明す 116
- 現存最古の五十音図は
- 日々研究に没頭
- なぜ薬王院温泉寺に
- 五つの母音を決める
- 法華経を読経するために
- 第九章 藤原定家と仮名遣い 132
- 歌学者たちの考察
- 御子左家の一人として正統を問う
- 「れいぜん」が「れいぜい」に
- 揺れる解釈をも含めて
- あの定家でも
- 言語は変化する
- 体言から用言へ
- 「行」という考え方
- 第十章 さすが、宣長! 152
- 五十音図の横の列
- 「ヰ、ヲ、ヱ」はどこに
- 国語学史上の一大発見
- 現代の方法と変わらずに
- 復古神道
- 終章 素晴らしい日本語の世界 165
- 消えた「いろは引き」
- 大槻文彦の自負
- 新しい精神
- 情緒よりシステムの構築
- 「あ」から始まり「ん」で終わる
- 両輪で言語的バランスをとる
- あとがき 182
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