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第三 音訓假借
平假名片假名が漢字の音訓を假りたる者なるを知る時は、謂はゆる宛字も亦音訓を假借するに於いて極めて自由なるべきを想ふべし。其の音にして他の音を假りたるは、前回之を擬音字として概説したれば、今は訓なるに音を假りたる、他の訓を假りたる、或は音なるに訓を假
- 甲 訓なるに音を假りたる
- 柄杓、美事、面倒、腕白、可愛
- 乙 訓なるに訓を假りたる
- 穴賢、浦山敷、六借、羽織
の類を述べんとす。(音なるに訓を假りたる者は殆無し)而して此等の宛字を品詞の上より見るに、全然其の異同を顧みざるものにして、其の矛盾の中に一種滑稽的なるをかしみを感得したる者の如し。前例「ヒサゴ」といふ一語を「柄杓」の二字に分ち、動詞の「見」を形容詞の「美」に變へて「美事」とし、感動詞の「アナ」を名詞の「穴」にて寫し、「羨シ」といふ一形容詞を二名詞「浦」と「山」とに動詞「敷」を加へて三字とせるが如く、「也」といふ感辭を指定助動辭「ナリ」に宛て、「得」といふ動詞「共」といふ副詞を「候ヘドモ」の動詞の語尾とテニヲハとに宛て、名詞「徒」をテニヲハに宛てゝ「宗徒の者」など用ゐ、「度」といふ動詞を希望の助動辭又は形容詞の接尾語とし、「俟」(變畫俣)といふ動詞を「マタ」とし、「股」の如く名詞に用うる類あり。又品詞は相當れども其の意義同じからざる者あり。「アナカシコ」のカシコは恐惶の義なれば同じ形容詞ながら「賢」とは異なるを、國語の「カシコ」は「恐」も「賢」も同義なるより相通用するなるに、漢字本位に沒頭せる人は此をも不當の宛字とすべし。「ハヌ」といふ動詞には「撥」「跳」「刎」など當れど、三字を通用しては義をなさざるは誰も知れる事ながら、「カヌ」といふ動詞の當る「兼」の字を、前以て未來を兼ぬる塲合に、「兼ねて」など用うるは誤れりとする人あるは如何あらん。「豫」は「アラカジメ」とこそ讀め、「カネテ」と讀む慣例の成り立たざる今は、なほ「兼」の字を正用のものとすべし。「難」の義の「參り兼ぬ」などは宛字の類に入るべし。
固有名詞特に地名の大部分は音訓假借の文字に依ること誰しも知る所なり。是は今の北海道樺太の地名の無理千萬なる宛字を用ゐたるにても推知すべく、古は其の上に二個の佳字を配用せんなどの餘計なる注文まで附けし爲に、愈むづかしき者となりたるなり。此等の地名が苗字となりて更に紛亂を重ねたり。明日香、安宿、飛鳥」 阿提、在田、足代、安殿」 乾、犬居」 石禾、伊射」 伊能、稻生」 上田、植田 江藤、惠藤」 江島、榎島、荏島、繪島」 小坂、大坂」 小原、大原」 垣内 海東」 狩野、鹿野、加野、賀野、蚊野、輕野、(伊豆)神野(常陸)、簡野、菅野、加納、嘉納、叶、賀名生、金生」 今、今野、今ノ、昆野、金野、紺野」 佐川、佐河、逆川、酒勾」 坂田、酒田、佐方、佐潟、相方、坂芥」 櫻井、佐倉井、柵瀬」 鈴木、鐸木、鱸」 綴喜、筒城、津筑、都筑、綴、津附」 逗子、圖師、都志」 土肥、土井、土居」 半田、吐田、範田、榛田」 畑、畠、秦、秦野、波多野、旗野」 逸見、逸水、早水、邊見、逸見」 三屋、三津屋、御津屋、三矢」 門傳、門田、文傳」 森、守、毛利」 柳井、簗井、矢内」 猪狩、五十里、井狩」 此等の同音もしくは同語と見做すべき者にして文字の異なる者は實に無數にして、二種以上の記載方なきが寧極めて稀なる珍例とす。およそ此の如き者は今詳説せず。以て少しく普通語につきて音訓假借の例を示さん。
よもた・いぬひこ(四方田犬彦);2000/3;モロッコ流謫;
;新潮社;(借覧);四六判;縦組;上製;285頁;;ISBN4-10-367103-3;
青山学院大学文学部日本文学科[編];2005/5;文字とことば―古代東アジアの文化交流―;
;青山学院大学文学部日本文学科[発行];(借覧);A5判;縦組;上製;161頁;;;[執筆者]やじま・いずみ(矢嶋泉)/さとー・まこと(佐藤信)/NAM PUNG-HYUN(南豊鉉)[趙大夏訳]/小林芳規/安田尚道/おがわ・やすひこ(小川靖彦)/たかだ・ひろひこ(高田祐彦)
3月に行はれたシンポジウムをもとにした論文集。
ジェレミー・フォックス[著]・さかた・かおるこ(坂田薫子)[訳];2001=2004/6;チョムスキーとグローバリゼーション;
ポストモダン・ブックス;岩波書店;(借覧);B6判;縦組;上製;vii+111頁;;ISBN4-00-027075-3;[原題]Jeremy Fox, Chomsky and Globalisation
1928年うまれで今年77歳なんだなあ。喜寿とか超似合はねえ。生田英考の解説によるとジョージ・スタイナーも同い年。
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