the view from nowhere : 2005-07-26 (Tue)

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三矢重松「宛字」(9)

十八 火闥

の文字明ならず。饅頭屋本節用集に此の火闥といふ文字を用ゐ、骨董集には火燵と作り、今も多く使用す。また火踏といふ字あり、炬燵は最新しき字ならむ、最意を得ず。コタツのコはクワの唐音的變音なるべきは論なし、唯タツの字は闥にても燵にても通ぜず。案ずるにキャタツといふもの踏次・踏臺の如きを稱するが、言海に脚榻といふ字を充てたり。脚榻は早く庭訓往來に見えて、貞丈は之を竹床の類なりと釋せるが、恐らくは禪僧などの傳來せる足臺の類なるべく布施物を列擧せる處に掲げたるにても推想せらるゝなり。此の脚榻を昔よりキャタツと讀めるにや、榻の音タフはタツと轉讀せられざるにあらねど、此の物今の支那語にてに脚搭子キヤタツといふなり、搭と榻の假借なるべく、子を添へて之をツといふは一般の事なれば、脚榻子と書きてキヤタツと讀むが最適當なるべし。是等より推量すれば、コタツは火榻子コタツなるべく、火踏といふ字面が最近きが如し。榻の字當るべしと思ふは、コタツの出來始は專足を暖むるに用ゐしやうにて、其の時代も是等の唐音とふさはしく思はるればなり。

十九 再々

再三といふ字に對して通ずるやうなれど、さては又再三より度數の少きやうにも思はる。此は度々ドドといふ語の度々タビ〳〵を音讀せると同じく際々キハ〳〵を音讀せる者なるべし。

草紙・草子のサツ子を長音便に言へるに宛てたるなるは特に言はず。

二十 辭儀

といふ字、今の儀式の言辭といふ如き意味には適當すれど、古には無き字なり。ジギは尚時宜にて時の宜しきに叶へる挨拶の言辭・會釋・謙讓・辭退・態度等に亘りて稱する語なり。叩頭・低頭など書きてジギはオジギなど讀まするは皆振假名宛字なり。挨拶はウツ義にて應接贈答などの意は直接には無けれど、アドウツ如く彼我互に挨拶問答する禪家などの作法より今の用法に轉じたるを併せ思ふべし。

二十一 司配

といふ字、ツカサドルといふ義を聞かせんとての思付と見ゆれど、支配といふ通用字にて其の義はあるなり。俚言集覽に、尾陽漫録を引きて胡三省通鑑の注に『支は分なり配は隷なり支記は今人の品配と言ふが如し』とあるを取り、官僚の屬類を支配といふと解せるぞ當れる。かくて名詞より動詞に轉ぜるか、又は始より動詞の義もあるなるべし。

二十二 吹嘘

といふ字面、一見目遠けれども、推擧といふも事々しく當らざる塲合多きを見れば、なほ吹聽・披露などに近く、吹嘘の字の古きに從ふべし。

二十三 所帶、所爲

ショタイ又セタイといふに世間に出でゝ一身代を持つやうの意あるより世帶を正字正語と思へる人多し。されど其の帶の字の解しがたきを如何にせん。所帶は所領と同じく所帶之庄園の義にして、財産又は一家などの義と轉ぜるなり。ショをセと轉ずるは御所ゴセ膳所ゼゼの例にても知るべし。タメといふ義にセヰといふも所爲シヨヰの轉なり、セイにはあらず。此の語所以シヨイにても解すべけれど、所以といふ字は我が國にて古來音讀して用ゐぬものなれば、縁遠きなり。

二十四 千六本

大根を細く切りたるを千六本といふは面白き字面なり。されど總べて野菜などを「セン」に切るといふ、其の「セン」が「千」ならば、大根の塲合「六本」は餘分になりて整はず。「セン」は纎にて、葛切を水纎といふ如く、纎蘿蔔センローフーの轉音なり。大根は、けだし外域のものにて支那にて音譯して蘿蔔とも莱菔とも記す、その音ローフーに近きより千六本と訛れるなり。

二十五 折檻

此の字、朱雲の故事より出づといふは如何あらん。責勘などが却つて當れるにあらじか。切勘とも書きたれば、切諫の字も有るべく思はる。諫の字イサムと訓じて、同語には上より下に對するにも用うるなり。

二十六 大層

の字解しがたし。大壯・大造などの字もあれど、大相が最當れるか。或は又サマの音便なるサウにて、大樣オホザウといふ語の上を音讀せるか。

二十七 丁稚

弟子デイシを促めて言へる轉音なり。丁兒の轉かといひ、雙角を双陸の賽の重一デツチ(此も出一デイチの轉か)と見て云へるかなどいふ、皆非なり。

こーだんしゃぶんげーぶんこ(講談社文芸文庫)[編];2003/6;戰後短篇小説再発見11 事件の深層;

講談社文芸文庫[こ J12];講談社;950円(借覧);文庫判;縦組;並製;237頁;;ISBN4-06-198334-2;[著者]たけだ・たいじゅん(武田泰淳)/まつもと・せいちょー(松本清張)/みしま・ゆきお(三島由紀夫)/しーな・りんぞー(椎名麟三)/くらはし・ゆみこ(倉橋由美子)/おーおか・しょーへー(大岡昇平)/のさか・あきゆき(野坂昭如)/なかがみ・けんじ(中上健次)/みやもと・てる(宮本輝)/ふじさわ・しゅー(藤沢周)

なかはら・あや(中原アヤ);2004/9;ひみつきち;

マーガレットコミックス;集英社;390円(200円);新書判;縦組;並製;176頁;;ISBN4-08-847784-7;

おーた・しょーじろー(太田晶二郎);1992/3;太田晶二郎著作集 第三冊;

;吉川弘文館;(借覧);A5判;縦組;上製;6+336頁;;ISBN4-642-01313-X;

けふの買物

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江藤淳・新潮文庫
半日の客 一夜の友
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ぼくたちの洗脳社会
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石蕗の花 網野菊さんと私
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