習作

『妖精喰らはれ』

「妖精」を手に入れたのは友人のすゝめが切掛でした。「自身がつくぞ」と何やら意味有りげに僕の耳に囁き掛けてきたのが何だか印象的だつたのです。値段は少し高かつたけれど註文すると一週間程して届きました。態と清潔を装つたやうな小包を開けると中には翅の生えた人がゐました。外気に触れたせゐか間も無く眼を醒ました其の翅の生えた女の人は豫め仕込まれてゐたものかニコと首を傾けて「××さん」と鈴の鳴るやうな声で申しました。僕が「あゝ」と返事をすると脊の翅を蠢かし僕の頭の周りを飛始め互に検分を了へた頃ほひ僕の肩にちよこと止まりました。其人は服を著てゐません。出るところは出ひつこむ所はひつこんで寔に肉感的な体を曝出し顔はと云へば之は寧ろあどけなくて其結合は可愛と云ふよりをかしいのでした。けれどさうして倶に外に出て見れば似た様な人が世間に溢れてゐて是は皆の嗜好なのだと知れました。女の人は僕の肩に止まつてゐて重さは丸で感じぬのですが時折何かゞ軽く当る感触が有ります。其人が飛びたつのです。さうしてしなをつくり乍ら飛廻ると又僕の肩に止まり耳の孔に頭を突込まん計りにして「大丈夫ですよ」と囁き鳴くのでした。その声を聞くと不思議と心丈夫になつて嘗ては吾が心の奥底に秘めてゐる丈だつた放埒な慾情を顕在化するを得るやうに成つたのです。自身がつくとは此事だつたかと合点がいきまづまづの満足を得ました。或日机に突伏して微睡んでゐた僕は密やかな呻き声を耳にしました。面を揚げると「妖精」がボオルペンを相手に自慰をしてをりました。少時はぼうとうち眺めてをりましたが内に自分の性器を挿入る事を思ひつきました。女の人は「裂けちやひます」と言ひましたが案外と易く深々と突きさゝり吾が身体は弓なりに反り夫れでもまだどんどんと引込まれるやうで抗へず遂に僕の体は腰の処で脊のはうへ二つに折れて了ひました。呵々。(畢)