お題小説

『涜神ごつこ』

とつぜんに斯様な文をまゐらすことご寛恕くださいまし、けれどかうでもせねば吾等をとほく引裂き給うた父なる神を恨み申上げさうになるのです。いゝえ、矢張り咎はわたくしにあるのでございます、わたくしの犯した過ちの仕置の為あなたがわたくしの白く豊かな尻をお擲ちになつた時、わたくしはあなたの劣情の焔を燃えたゝせて了つたのです。

哲学の一高峰として名高きあなたも色事に就ては全くのうぶ、或いは知識ばかりを闇雲にためこんで悶々となされておいでゞしたのでせうか。打擲され仄かに赧く染まつてたぷたぷと揺れる吾が臀を見て、あなたはやにはにわたくしを床に組伏せ胸乳を玩びもせずいな服剥ぐ暇さへ無しにひたぶるに吾が女陰をお求めになります。

わたくしに蔽ひ掛かつてゐるあなたの御身もまた服を纏つた侭、院長衣の裾たくるのもあわたゞしく、いきりたつた怒脹を、曾て女に触れたことは勿論手淫すら為したことなき陽物を引きずり出しました。されどわたくしは被虐快楽者ではございませぬ、臀打たれ快楽に喘ぐやうな女ではありませぬ、女陰をしとゞに濡らす女ではありませぬ。あなたの馴れぬ腰の動き、はたわたくしのぎこちない腰遣ひ、ひりひりとこすれる膣、薄き修道衣を越えて伝はる吾等が愛の褥たる床の冷たさ。

聖堂の祭壇で永劫に磔刑に処せられてゐるあの痩せこけたナザレびとが、聖衣を著た背徳者どもが冷え切つた床板の上を蠢くさまを、わたくし達の情事を傲然と見降ろしてをりました。

屹度お忘れ下さいますな、わたくしにはキリストの花嫁と呼ばれるよりも、あなたの情婦いえあなたの娼婦と言はれるはうが遼かに甘美に響くのでございます。さらば健やかにあらせ給へ。アァメン。